ホテルの外の通りは、先程と打って変わって静まり返り風も吹いていなかった。
ログとセイジ、その後ろにスウェンが続き、その三人の後ろをエルが少し離れて歩いていた。クロエはバストンバッグの中から、辺りを物珍しそうに眺めている。

 エルは歩きながら改めて考えた。何の必要があって、マルクという科学者は外の人間を連れ去ったのだろう。彼らの一部は死んで外の世界で発見され、他の者は見つかってさえいないという。

 連れて来られた人達は、どうなってしまったのだろう。

 スウェンやセイジから話を聞かされた時から、科学者であるマルクが、非人道的な実験を進めた可能性がエルの頭の片隅から離れないでいる。しかし、本当にそうなのだろうかと、エルの思考は、いつもそこで途絶えた。

 小さな鳴き声が聞こえて、エルは我に返った。クロエが脇腹に頭をすり寄せていた。

 らしくない事を考えた、ごめんねと心の中で謝りながら、エルは彼女の頭を撫でた。心なしか、クロエの毛並みが少しふっくらしたように感じた。

「そういえば、支柱っていうのはどうやって探すの?」

 エルは一先ず思考を切り替え、近い距離にいたスウェンの背中に尋ねた。彼は肩越しに振り返り、「外に協力してもらってるよ」と答えた。