「どうなんでしょうかね。こちらで入口は閉じたってのに、マルクさんも仮想空間に逃げちまいましたからね。あんたの説明も信憑性が揺らいじゃってます」

 何もかも『合わない』『有り得ない』事ばかりが続いている。ハイソンは「そんな事ぐらいは知ってるッ」と、自分を敬っているのか分からない後輩兼部下を叱りつけた。

 これまでの被害者達が仮想空間に入ってしまった要因についても、現在調査中だった。

 スウェンの報告にあった少年については、至急捜索が開始されている。今のところ、マルクやアリス、これまでの被害者たちと同様に身体ごと仮想空間内に入ってしまっているのかは不明だった。

 ハイソンとしては、倒れた少年を保護しているという報告を、心の底から期待している。

 身体ごと入っていた場合、その少年が、今事件での最後の被害者という可能性が高くなる。そもそも、現在アリスの救出を目的とした脱出方法の模索が進められているとはいえ、一般人である少年が、妨害が働く仮想空間内で、軍人と共に最終エリアまで無事に辿りつけるとは思えないのだ。