スウェンは、ログがエルに向けているらしい想いを考慮して、迎えに行く件については譲歩する事にした。彼としても、信頼している部下二人が迎えに行く方が安心出来るし、クロシマという運転手が付いているので、多分大丈夫だろうと考え直す。

 改めて大佐の部下と向かいあったスウェンが、「じゃ、僕らは大佐のところに行こうか」と声を掛けた時、ハイソンが「ちょっと待って下さいッ」とスウェンを引きとめた。

「あの、ログさんは大丈夫でしょうか?」
「まぁ、体力は底をついちゃうんじゃないかな。それでもログは、一番に駆けつけて格好良いところを見せ付けたいんでしょ。……何があったのかは知らないけど、あれは確実に自分の気持ちを悟ってるよね。もう冗談抜きで本気なんだろうけど、僕としては、エル君がすっごく心配だなぁ……」

 スウェンは気掛かりを覚えて、思わず視線をそらして呟いた。不器用で鈍いログは、ああ見えて一途に走るタイプではあるので、恐らくエルを怯えさせるような事はしないとは思うが、――仮想空間内で彼の妄想を聞いた後なので、ちょっと自信がなかった。

「うん、ここは僕がしっかり頑張るしかないね。これからは僕とログの家に、エル君を住まわせる訳だし、所帯を持っているセイジを呼ぶわけにもいかないし」
「あの、話がよく見えないのですが……?」
「ああ、独り言だから気にしないで」

 ハイソンの存在を思い出して、スウェンは思考を切り替えた。

「でも良かったよ。僕としても、あの二人になら安心してエル君を任せられるし、君のとこのクロシマ君が運転してくれるっていうから助かってる」

 そのスウェンの言葉に、ハイソンは、今後の事を考えて気が重くなった。胃の辺りに鋭い痛みを感じた。ひとまずは、運転手を買って出たクロシマが、新たな問題を起こさないよう祈るしかない。

 そんなハイソンの心配を、別の事と見て取ったスウェンが、込み上げた笑いを控えつつ彼の肩を軽く叩いた。