報告内容を聞いたクロシマが口笛を吹き、ハイソンが「え、一般の民間人だよな?」と唖然としたようにぼやいた。迎えに向かわせたのは、大佐に直属する部隊の人間のはずだ。そんな彼らが、手も足も出ない状況がハイソンには予想外だった。

 ラボにいる者達が「どういう事?」と困惑したように囁く中、セイジがぎこちなく宙を見やり「全員やられたとなると、本物のエル君だろうなぁ」と困ったように呟いた。スウェンも頭を抱えた。

「しまったな……僕とした事が、その展開を予測出来なかったなんて」

 実際にエルの戦いぶりを見た人間であれば、外見が見青年である華奢なその日本人が、どれだけ手ごわい敵となるかは容易に想像が付く。とはいえ、スウェン達三人の他は、その現状を知らないのである。

 スウェンとしても、エルの強さを忘れていた訳ではない。その件に関しても、これから大佐達には教えるつもりであったのだ。偶然にしては不自然な点もあるので、エルを育てた『おじさん』についても早急に調べ、所長であるショーン・ウエスターにも確認するつもりでいた。

 事情を知らないハイソンが、困ったようにスウェンへ目を向けた。

「どうされます? 増員を頼んだ方がいいですかね……?」

 スウェンは溜息を一つこぼすと、思案するように顔に手をあてた。

「……全く、あの子は期待を裏切らないね。応援を寄越したとしても、体術戦じゃ敵わないだろうし――とはいえ、武器や薬を持ち出したら、そいつらを僕が殺してやるけれどね」

 ハイソンは、初めて見るスウェンの殺気立った冷酷な横顔を見て、本能的に後ずさりし「じゃあどうしろと!?」と思わず素で叫んだ。

 その時、ログが不敵に笑った。