「じゃあ、お前が車出せ。今すぐだ」
「えぇ、今日はまた随分と反抗的だなぁ。だから、僕は大佐達とも話しがあるから、見動きが取れないんだってば」

 その時、ラボに設置されている電話が鳴り響いた。

 ハイソンが、乱れたシャツの襟を整えつつ、その場の全員が聞こえるよう電話の通話回線をオンに切り替えた。電話のスピーカーから流れてきたのは、国際通りにて特徴の一致する例の少年を発見した、という報告だった。しかし、そう告げた男の声は疲労しきっていた。

 発見した時、黒いロングコートの少年は泣いていたという。派遣員達は日本語で話しかけたのだが、彼は異国の黒服の男達を警戒したのか、何故か一通り全員もれなく殴り飛ばしてしまったのだという。

 少年は少し怪我もしており、疲労しきってもいる様子なので保護したいが、近づくと接近戦に持ち込まれて全く手も足も出ないとの事だった。少年は、今も壁際に腰を降ろして泣き続けており、どうしたらいいかと、指示を仰ぐ連絡だった。