話を後ろ耳に聞いていたハイソンが、短い声を上げて飛び上がった。

 クロシマは、緊張して方を強張らせたハイソンの背中を盗み見すると、含み笑いしつつ、スウェンにチョコバーを手渡した。

「失礼だなぁ。僕は、そう簡単に人を殺すような人間じゃないよ」
「そっすか。じゃあ、四分の三殺しぐらいっすか?」
「まぁ場合によるかな」

 途端に、ハイソンが勢い余って、スウェン達のいる方を振り向いた。

 スウェンとクロシマは、彼から視線をそらすと、お互い肩を震わせた。

「見掛けによらず、あの人面白いなぁ」
「でしょ」
「か、からかうのは止めて下さいよッ」

 ハイソンが言い掛けて「ぐうッ」と腹を抱えた。スウェンがその様子に気付いて、「彼、大丈夫なのかい」とチョコバーを開けるそばで、クロシマが「持ち前の胃痛なんです」と冷静に答えた。

 後ろの二人の組み合わせが嫌だな、とハイソンは思いつつも、口には出来ず仕事へと戻った。クロシマは欠伸を一つもらすと、台の上に置いた珈琲カップを持ち上げ、キーボードを叩く忙しそうな所同僚達を眺めた。