「そもそも、僕らを分けて別々に送り出すというのが怪しいだろう? そう指摘してみたら、笑顔全開の顔で蹴り落とされたんだよ。――とはいえ、あんな事を言われてしまっては、僕も強く反抗出来なかったのも原因なんだけどね」

 スウェンは思い出して、握った手を見降ろした。

「付き落とされる直前、ホテルの彼に不意打ちみたいな顔で、もし叶うのならばエル君の事を頼む、と言われた」
「どういう事だ……?」
「どうやら僕らは、エル君に隠し事をされていたみたいでね」

 本当に困った子だ、とスエスンは苦笑した。

 出会った時から危うい子だとは思っていたが、途中から、エルの目に避けられない死への恐れを感じるようになった。それが、死を受け入れ覚悟する強さに変わっていたから、もしや、と嫌な予感はしていたのだ。

「多分、エル君が死ななくちゃならない何かがあったんだろう。でも、ホテルの彼は、当初からエル君を助けるつもりで動いていた。こっちで稼働していた『ナイトメア・プログラム』というものは、恐らくホテルの彼自身が、こちらで動き回る為の媒体だったと思うけれど ――それが指示したのは帰還する生身の人間の保護で、その場所は、マルクとアリスが消えた部屋と、エル君が歩いていた国際通りの二地点だったよ」