ログとエルの身体は、急速に天空へと引き寄せられ、崩壊する世界の外を覆う闇へと投げ出された。二人の身体は、あっという間にエリスの夢世界を離れてゆき、七色に光り輝くエリスの夢世界も、すぐに見えなくなっていった。

            ※※※

 覆い尽くす暗黒には、音も温度もなかった。二人の身体は闇の中を漂い、出口らしき一点の小さな光が遠くの向こうに現れて、そこに向けてゆっくりと引き寄せられる。

 ログは、泣き続けるエルの顔を正面から見据え、「頼むから、泣くな」と懇願するように言い、どうして良いのか分からない様子でぎゅっと抱き締めた。彼は、エルの小さな頭に二、三回、自分の手を置いた。

「俺は、お前を絶対に一人にしない。外には、スウェンもセイジも、アリスも、ハイソンや他の奴らだっている。だから――」

 乾いた空気の流れを感じ、ログは顔を上げた。

 出口らしき鈍い光が、いつの間にかそこまで迫っていた。次第にエルの身体が引き離され始めている事に気付いて、ログは、仮想空間は入った地点に出る仕組みだったと思い出し、引き離される力に逆らうようにエルの手を掴んだ。

 闇の中で、二人は両手を握りしめて近くから見つめ合った。

「外に出たら、すぐ迎えに行く。だから、そこで待っていろ」

 ログは「頼むから」と乞うように言い、彼女からの返事を待った。

 エルは、引き離される力に逆らうログの、大きな手の温もりを確かめたくて、きゅっと握り返した。こちらを覗きこむログは辛そうに眉を寄せていて、本当は一時でも離れたくないのだという想いが眼差しから伝わって来た。

 大きくて暖かくて、不器用だけれど優しい人。

 クロエとの別れが、辛くて悲しかった。彼らと、もっと一緒にいられたらと願った現実が、ログの暖かい手を通してエルに実感を伝えて来て、正反対の感情が心でぐしゃぐしゃになり、涙が溢れた。