大人びた腰のくびれも、胸の膨らみもなくなってしまった幼いエリスは、泣き続けていた。すぐそばに降り立ったホテルマンにも、気付く様子がなかった。エルが声を掛けても反応がなく、こちらの姿を認識出来ていないようだと知れた。

「本来であれば、彼らは人の姿を取る必要がないのです。それでも彼らは、人により近づこうと、無意識にその姿を形成します」
「……身体から宝石みたいなのが飛び出しているけど、痛くないの?」
「痛みはありません。夢の創造を任されている『夢人』の身体には、いくつもの結晶があるのです。中心に大きなルビーが見えるでしょう、これが、人間だったエリスの夢の『核』なのです」

 エリスの身体の周りは、暖かい光りの膜のような物で覆われていた。ホテルマンがそっと手を添えると、たちまち破裂し、強烈な光りが一帯に放たれた。

 エリスの泣き声が、不意に止まった。

 猫の目のような、彼女の黄金色の瞳が、真っ直ぐエルを向いた。