さあ、最期の時を迎えよう。賭ける未来に、全てを託して。
 

 ああ神様、どうかお願いです。

 私の愛しい子たちの為に、どうか、あなたのお力をお貸しください。

        ※※※

 ――少し前。
 エルは、ログにクロエを託して別れた後、ホテルマンと歩き出した。

 小さな女の子の泣き声が、吹き荒れる風と轟音に混じって響き渡っていた。塔の外壁が次々に剥がれ落ちる中、剥き出しになった塔の階上から降り注ぐ眩い光りを、一度だけ仰いで――エルは、ホテルマンと共に塔の中へと入り、最上階を目指した。

 螺旋階段を出た先で、ようやく会えた『エリス』は、写し取った元の人間の姿形を失っていた。

 エル達が求めていた『エリス』は、さながら巨大な花から生まれた美しい妖精のように、そこに座り込んでいた。小さな両手から無数に生える色鮮やかな宝石、胸には巨大な菱形をした七色に輝くダイヤが埋まっており、目尻と耳朶からは、真っ白な羽毛が覗いていた。人間であったエリスのブロンドの髪だけが、面影として残っているばかりだ。