長く続いた螺旋階段の上に、ようやく終わりが見えて来た。円錐系に開いた頭上から小さくこぼれる光が見えた時、そこから唐突に吹き抜けた爆風が、ログの全身を荒々しく打った。

 身体が、螺旋階段の外へと押しやられそうになった。雑種犬が振り返り、「ふわん」と気の抜けそうな声で上げる。

 だからこういう状況で阿呆みたいな声で吠えるなッ、へたに力が抜けそうになるだろうが!

 ログが、拙い、と思ったその時、男の大きな手が、間一髪のところでログの胸倉を掴んだ。それは乱暴な手付きだったが、男はログの体重を腕一本で易々と支えてしまうと、安全な螺旋階段へと引き戻した。

 短く礼を告げた瞬間、ログは階下で爆音が生じる音を聞いた。風が渦を巻いて頭上へと巻き上げ、螺旋階段が不安定に揺れ始めた。

「いかん、ナイトメアが『発動』しちまう」

 男が、野太い声を上げた。

「この空間は、この世界の中心に向けて引きずり込まれるぞ」
「どういう事だッ」

 ログは、耳元で騒ぎ続ける風の音に負けじと声を張り上げた。男が、風に煽られるログの腕を掴んで支え、クロエを腕に抱えたまま告げる。