「それを、別の人間で補うって事か?」
「ああ、そうだ。その為に、俺とポタロウがここへ来た。一時的にとはいえ、ナイトメアはこの世界に来て、仮の身体で動く事が可能となった。移動手段には特殊な『器』が必要だが、既に発動場所へ来られた後はエルじゃなくてもいいって事さ」

 男は、唇を舐めて話を続けた。

「タイミングが良かったんだ。人工夢世界が混じり合って、偶然にも生きた人間が複数人いて、ナイトメアと繋がれるクロエもいた。お前達が動いた事で、ナイトメアには余力が残された。生きているクロエと、俺とポタロウの持つ過去を足せば、あいつはエルの身体から自分を切り離す事が可能だとも考えているんだろう」

 それはつまり、クロエを『宿主』とやらにしてしまおう、という事だろうか?

 ログは、男の片腕に抱えられるクロエに聞こえるよう、「おい」と大きめの声を上げた。

「お前は、それでもいいのか。エルの身代わりになるって事は、もう、あいつと外の世界に戻れないって事だぞ」