空から降って来たのは、白髪に、白い無精髭を短く伸ばした大柄な体躯の男だった。褐色に焼けた肌がよく見えるタンクトップと、ラフな半ズボン。年は六十ほどだろうか。盛り上がった逞しい筋肉が、やたらと目についた。

 というか、空から降って来て無傷、だと……?

 セイジ並みに身体が丈夫なのか、またしても人間ではない、夢世界の特殊な登場人物なのかとログは疑ったが、唐突に現れたその大きな男は、地面に転がっているログに気付いているのか、気付いていないのか――

 ログの背中を、容赦なく右足のサンダルで思い切り踏み付け、例の頭の悪そうな雑種犬に向かって指を差した。

「お前ッ、主人である俺より先に到着するとは何事だ! 先に俺から挨拶させるのが礼儀だろうがい!」
「つかマジ痛ぇ! お前こそ俺に対する礼儀はねぇのか!?」
「あぁ?」

 男は、ようやく気付いたと言わんばかりにログへ顔を向けた。

 ログは、こちらを怪訝そうに見降ろす明るい水色の瞳と目が合った。顔立ちは見慣れた西洋人のもので、どうやら男はアメリカ人のようだと知れた。