部隊が解散された後、いくらかの制約はあるものの、自由な選択を許可された。スウェンが走り回ってくれたおかげで、彼らは家族を持ち、会社に就き、そのまま軍に残る者や故郷に帰る者、大学へ学びに行った者もあった。

 最後に在留した沖縄で、部隊のトップだったスウェンとセイジとログは、半ば軍の管理下に置かれる状況で、外部機関として残った。上層部はスウェンを恐れ、同時に手放したくないとも考えていた。彼の人脈と頭脳、戦略力を考えると、彼が敵に回る方が遥かに恐ろしかったのだ。

「スウェンは、俺達より多くの人間を簡単に殺し過ぎた。貸し出された兵士を平気で盾代わりにするし、大佐の命令一つで、昨日まで軍師だった人間の暗殺もやってのける。戦いの場において、あいつの中では、仲間以外の死がひどく薄っぺらくなっちまうんだろう」

 ログがそうぼやくと、クロエが『いいえ、そんな事はないわ』と穏やかな声で言った。

『きっと、彼も貴方と同じだったと思うわ。貴方達と家族のように過ごせた中で、彼の中でも、殺す事への意味合いに変化はあったはずよ。貴方達は皆、人の痛みを感じる事が出来る、優しい子達だわ』

 どれぐらい話しただろう。気付けば、世界を飲み込む暗黒は、すぐそこまで迫っていた。凶暴になった風は、髪と衣服を激しく打っている。