二組目のスウェン達を見送った後、残されたログとエルの間に、沈黙が流れた。
 
『仮想空間エリス』の世界は、周囲のほとんどが崩れ去ってしまっていた。残されている土地は、巨大な塔までの十数キロメートルもない。

 まるで暗黒の中に、『エリスの夢』だけがぽつりと浮かび、取り残されているようにも思えて、エルはクロエを抱いたままじっと眺めてしまった。

「おい。スウェンは納得していたようだが、そもそも一組ずつって意味あんのか? 全員で向こうまで行って、一組ずつ『出口』に入ればいいだけなんじゃねぇのか」

 難しい事は分からないが、とログが疑問を口にした。エルは、クロエを抱きしめたまま、「さぁ、どうかな。そうかもしれない」と上の空で答えた。

 世界が削り取られるような崩壊は、周囲からだけでなく、上空からも迫っているようだった。巨大な塔の先端部分から崩れ始め、崩れた塔の一部が宙を漂いながら、ゆっくりと上空の闇へ吸い込まれていくのが見えた。

 次第に、塔上部の外側も剥がされ始めた。吸い上げられる残骸から巻き起こる風が、地上にも届き始めた頃、エルはログへ顔を向けた。