ログが心情の読みとれない仏頂面で、食い入るようにエルを見つめた。スウェンとセイジがそれに気付いて、どうしたと問いかけても、彼は反応を返さなかった。

 ログに掴まれた手は、強く握りしめられている訳ではないので痛みはなかったが、逆にその気遣いがエルを困惑させた。エルが、どうして良いのか分からずたじろぐと、ログは警戒を見て取り、ようやくエルの右手を解放した。


「俺にもまだ確証はないが。多分、俺は一人の女として、お前の事が気になっているんだと思う」


 じっくりと思案するようなログの唐突な発言に、その場が異様な沈黙に包まれた。マルクだけが硬直を免れて、「犯罪じゃないのかね」と冷静に意見をこぼした。

 エルはすぐに言葉の意味が理解出来ず、たっぷり数秒考えていた。ようやく彼の発言を自分なりに解釈し、「びゃ!?」と意味のなさない悲鳴と共に飛び上がった。

「ッて、んな訳あるかぁぁぁあああ!? おまッ、ここに他の女がいないからって……」

 おかしい。絶対におかしい。だって、あのログだぞ?

 色気がないだの男にしか見えないだの、常に喧嘩を売って来るような男なのだ。エルは、ぐるぐると騒ぎ立つ思考で、懸命に何かの間違いだと言えるような可能性を探した。