訝しげにまじまじと観察するが、ログは相変わらず、何を考えているのか分からない仏頂面で両手を広げていた。それを見たスウェンが、珍しい光景に首を傾げつつ、エルに捕捉した。

「ログの頭にはね、彼が死にかけた時の傷跡が残っているんだよ。ローランドが死んでしまった時、彼は重症を負ったんだ」

 エルは、ログが以前、触られるのは嫌いだと言っていた事を思い出した。そういう繊細な理由があったのかと腑に落ちたが、何故今ここに来て、ログが触ってみるかと提案したのか分からない。

 触った方が実感を持てるだろうけれど、エルは子供じゃないのだ。別に嫌々ながら触らさなくとも、大人の事情ぐらいは言葉で察せる。プライベートの中でも繊細な部分であるなら、尚更躊躇する提案である。

 悩み戸惑っていると、ログが珍しく、比較的力の抜けた穏やかな声でこう言った。


「――エル、おいで」


 まるで手懐けたい犬か猫を呼ぶような台詞に、エルは「おいコラ」と睨み返した。しかし、わざわざ両手を広げて待っているログの様子に変化はない。

 彼に拒絶はないようだったので、エルはスウェン達が見守る中、恐る恐る近づいてログの大きな頭に触れてみた。普段は絶対に手が届かないであろう、ログの頭髪の中にそっと指を入れて少し探ってみると、後頭部に凹凸部分がある事に気付いた。

「うわっ、何だこれ」
「後方から爆撃を受けた。首の後ろにも裂傷痕がある」

 そういえば、以前のセキュリティー・エリアで、ちらりと見たなとエルは思い出した。