「救った……?」
「ログはね、元々『破壊の力』なんて特殊な能力は持っていなかったんだ。身体レベルを強化された部隊員で、『破壊の力』を持っていたのはローランドの方だった。この仮想空間を造り出した所長、ショーン・ウエスターがログの一命を取り留め、ローランドの力を移植したんだよ」

 つまり奴は一度死にかけた事があって、解剖が出来る所長に救われて……?

 なんだか難しい話だ。特殊な能力を移植出来る医者もいるのか、とエルは簡単に考える直す事にした。エル自身、所長に助けられた過去があるので、まぁ医者だといわれても肯ける部分はある。

 そうか、ローランドという人は死んでしまったのか。このコンバットナイフは、きっとスウェンにとって、大切な形見なのだろう。

 エルは礼を言って、スウェンにコンバットナイフを返した。

 すると、話しを黙って聞いていたログが、ふと瓦礫の背もたれから身を起こしてエルを見た。エルが怪訝に思い「なんだよ」と警戒しつつ憮然と返すと、彼もまた怪訝そうな顔をした。

 ログがやや背を丸めるようにエルを見据え、両手を開いて「エル」と呼んだ。

「触ってみるか?」
「は? どこを」

 というか、その手はなんだ。子供を招く時の仕草か?

 思わず見つめ返すエルわ、ログは、愛嬌もない目でじっと見据えていた。