スウェンの部隊に、偶然にも同じ名前の男が二人いた、と……
ひとまず、エルは「なるほど?」と肯いておいた。スウェンが困ったような含み笑いを浮かべて、エルに話の先を続けた。
「僕らが所属していた部隊は、はじめ成人未満の少年兵で構成されていてね。口外出来ない実験に参加させられていた子共や、軍に引き取られて英才教育を受けた子共、スカウトで優遇招待された若い軍人が居たんだよ。ローランドは戦争孤児で、物を壊してしまうという特殊な能力を持っていて、それを自由に扱えるよう軍で鍛えられた」
マルクが「ふむ」と片眉をつり上げた。
「噂では聞いた事がある。生物兵器の開発や、人体実験に関わる部隊もあったと――色々あったようだが、それは軍事機密だろう。話してもいいのか?」
「僕らにとって、それは軍事機密ではなく、大事な仲間との思い出なんだ。僕は酷い事をされた子共達を沢山見て来たから科学者が嫌いなのさ。僕だって、絶対記憶力を強くするとか何とかで、何度か脳をいじられたからね」
「解剖となると、ショーン・ウエスターか」
「違うよ。彼は、もっと深い部分を請け負っていた。彼の元にいった子供達は、一人も帰って来なかったよ。一部の実験に噛んでいた僕らにさえ、全容は分からないぐらい軍の闇は深い。……十代でメスを自由に使っていた彼こそが、軍の暗黒時代の全てを知る張本人だろう」
とはいえ、とスウェンは固くなった空気を解すように声を和らげて、エルへ視線を戻した。
「彼もまた、絶対の悪とは言えないのかもしれないね。自ら望んで人間を切り刻んだという噂は聞かないし、一人の医者としてログを救った事実もある」
ひとまず、エルは「なるほど?」と肯いておいた。スウェンが困ったような含み笑いを浮かべて、エルに話の先を続けた。
「僕らが所属していた部隊は、はじめ成人未満の少年兵で構成されていてね。口外出来ない実験に参加させられていた子共や、軍に引き取られて英才教育を受けた子共、スカウトで優遇招待された若い軍人が居たんだよ。ローランドは戦争孤児で、物を壊してしまうという特殊な能力を持っていて、それを自由に扱えるよう軍で鍛えられた」
マルクが「ふむ」と片眉をつり上げた。
「噂では聞いた事がある。生物兵器の開発や、人体実験に関わる部隊もあったと――色々あったようだが、それは軍事機密だろう。話してもいいのか?」
「僕らにとって、それは軍事機密ではなく、大事な仲間との思い出なんだ。僕は酷い事をされた子共達を沢山見て来たから科学者が嫌いなのさ。僕だって、絶対記憶力を強くするとか何とかで、何度か脳をいじられたからね」
「解剖となると、ショーン・ウエスターか」
「違うよ。彼は、もっと深い部分を請け負っていた。彼の元にいった子供達は、一人も帰って来なかったよ。一部の実験に噛んでいた僕らにさえ、全容は分からないぐらい軍の闇は深い。……十代でメスを自由に使っていた彼こそが、軍の暗黒時代の全てを知る張本人だろう」
とはいえ、とスウェンは固くなった空気を解すように声を和らげて、エルへ視線を戻した。
「彼もまた、絶対の悪とは言えないのかもしれないね。自ら望んで人間を切り刻んだという噂は聞かないし、一人の医者としてログを救った事実もある」