「でも俺、だいたい話しちゃったし、他に話す事も思いつかないよ」
「じゃあ、君に貸していたコンバットナイフについて、僕が語っちゃおうかな。ナイフの持ち手に、名前が彫ってあるでしょ」

 あ、そう言えば返さなきゃいけないんだった。

 エルは思い出しながら、片腕でクロエを抱えたまま腰から革鞘ごとコンバットナイフを取り出した。確認してみると、確かに、そこには「R・グローブ」と名前が彫られていた。

「僕の部下で、ログやセイジたちとは同期になるんだけど、名前は『ローランド・グローブ』といって、ログと同じ名前なんだよねぇ」
「えッ、そうなの!?」

 思わずログを見やると、その振動で揺らされたクロエが、腕から抜け出して地面に飛び降りた。エルは気付かないまま、どういう事だろうかと戸惑う顔で、ログを指差して訝しげに呟いた。

「……お前、『ローランド』? ローランドで、グローブなの?」
「おい。お前の頭の中、パニックになってるだろ。ファーストネームがローランドで、愛称が『ログ』だ。同じ名前が二人もいたら面倒だろ」

 それに、俺はローランドって呼ばれるのは苦手だ、とログはぼやいた。彼は残りの説明を任せるようにスウェンに目配せすると、瓦礫に背を預けて腕を組んでしまった。