「ホテルの彼は戻って来ないし――まだ時間もあるみたいだから、昔話でもしようか」

 マルクの話が終わってしばらく経った頃、ホテルマンが消えた方向をしばし見やった後、唐突にスウェンがそう切り出して、にっこりと一同を見渡した。

「元の世界に戻ったら、僕は真っ先ピザを食べたいな。あ、皆で映画館なんてどう?」
「映画館の前に飲み会だろ。軍の経費で下りるだろうし、ハイソンは下戸だからな。飲ませるのが楽しみだぜ」
「私はホラーとスプラッタ系以外なら、まぁ映画に付き合ってもいいが……。ログ、すぐに打ち上げは無理だと思う、色々と後処理があるだろうから」
「んなの俺たちの仕事じゃねぇだろ」

 軍人三人の話に、マルクが「付き合ってられんな」と呆れたように口をへの字に結んだ。エルも、最後まで自分達のペースを崩さない彼らを見て、苦笑を浮かべた。

 ログの提案に「飲み会ねぇ」と明るい表情で呟いたスウェンが、話に参加して来ないエルへ顔を向けた。