「残念ながら、当時の技術では映像を残すまでには至らなかった。設計図とイメージ画像が残されていただろう、あれしかない」
「頭の中で見ている光景を残すってのも、無理な話だろ」

 瓦礫に背を持たれたログが、「難しい事は分からねぇけどよ」と怪訝な顔でそう言った。スウェンが気掛かりを思い起こしたように、そっと眉を寄せて、誰にも聞こえない声量で口の中で呟いた。

「ホテルの彼は『出口』を確認すると言っていた……彼らは『宿主』を守るらしいし、これで本当に終わりという事は、つまり、嫌な予感も全部、僕の取り越し苦労だったと考えていいのか……?」

 スウェンが首を捻った。

 エルは、もしあの時、今の運命を選択しなかったら出会う事のなかった光景なんだよな、と話す一同を見つめていた。そう考えると、この世界でスウェン達と出会えた事も奇跡のように思え、生きていて良かったなと思う。

 出会えて、良かった。

 それを、今更になって少しだけ寂しくも感じた。けれど悔いは、きっとすぐに色褪せてくれるだろう。

 別れる心構えも覚悟も、もうとっくに出来ているのだから。