スウェン達と合流し、全員が揃ったところで、お互いの無事を確認し合った。スウェンは、マルクを見ると驚いたように目を見開いたが、嫌悪というよりも、どこか興味深そうに彼を窺い、苦笑をこぼして「予想していたのと違うなぁ」とぼやいた。

 マルクは、ログにアリスの元まで運んでもらうと、瓦礫を背もたれに彼女の隣で腰を落ち着けた。彼は眠ったアリスの頬を曲げた指の背で撫で、彼女の心臓が動いている様子を確認して、そっと安堵の息をこぼした。

 スウェンとセイジは擦り傷だらけだったが、大きな怪我はなかった。塔の外での戦いは徐々にハードになったようだが、『エリス・プログラム』の破壊が完了すると同時に、全てが停止してくれたらしい。ホテルマンの衣服にも、少しだけ擦り傷が入っていた。

 スウェンとセイジとログの三人で、遂行された任務について情報交換されている間、エルは、クロエを抱きしめて再会を喜んだ。ホテルマンが「私がきちんとお守りしましたからね!」と演技臭く自己主張して来ても、「ありがとう!」と答えてしまうぐらい嬉しさを覚えていた。

 上空は、黒一色に染まっていた。

 星も見えない、深い闇ばかりが世界を覆っている。暴走を起こしていた『エリス・プログラム』の核が失われ、残された正常機能の主導権が人間側に奪還された為だ、とホテルマンが説明した。

「まぁ、ギリギリーフ、というところでしょうか。人工夢世界のエリスが、本格的に戦闘に入る前に、タイミング良く『エリス・プログラム』が破壊されてくれましたし? 『外』の人間が頑張ってくれたおかげで『出口』も繋がりましたので、私が脱出経路を確かめてまいります。お客様達は、身体を休め、今しばらくお待ち下さい」

 ホテルマンはそう言うと、一つ飛びで瓦礫を飛び越え、廃墟と化した高層ビル群の向こうへ消えていった。