勿体ないって何だ、弱味を握ったとかいう、アレか……?

 どこか機嫌を良くしたログの腕から、すっと力が抜けたので、エルは訝しみつつも彼の腕を抜け出して地面へと降り立った。気になってマルクの身体の様子を確認してみたが、足に関しては軽い骨折があるようで、他は擦り傷や小さな切り傷で済んでいた。

 その時、エルはマルクと目が合った。途端に、彼が怪訝そうに眉を顰めた。

「自分の身体は、自分が一番良く知っている。別に重症な損傷個所はない。……君は、実にお節介な子供だな」
「だから、子共じゃないっつってんだろ。俺はこの前、ちゃんと二十歳になったの! お前、俺の話し聞いてた?」

 すると、マルクを脇に抱えたログが、宙を見やるように僅かに首を傾げた。

「そういや、お前二十歳なんだったか」
「なんだよ、文句でもあんの?」
「二十歳ならセーフだよな」
「何が?」

 エルは訊き返したが、ログはどこか思案するように「うっかりとはいえ、あの妄想も合法か」「そうか、成人……」と、顰め面からは先程の気迫もすっかり抜けていた。