「――まぁ男の子であれば、子供ではないと言える年齢だろう。けれど、女の子は、ゆっくり育っていけばいいのだ。そんなに早く大人になろうとしなくても、それぞれの成長速度で、大人になってしまうものなのだから」

 そう続けて、マルクが懐かしむように目を細めたのを、エルは不思議そうに見つめた。

 ログは二人を抱えたまま、品もなく床を踏みしめながら無言で塔を出た。外にエリスの姿はなく、大地には大きな穴が複数あるばかりで、黒い鉄の茨も消えてしまっていた。

 破壊されつくした場所から、スウェンが「おぉ~い」と呼ぶ声が聞こえた。

 エルは、慌てて袖口で涙を拭った。ログの腕は、人間一人を抱えているとは思えないほど安定していて、その現状にも恥ずかしさを覚えて身をよじった。

「――ログ、もう下ろしていいよ。俺、大丈夫だから」
「もう平気なのか。泣き虫は」
「泣き虫じゃねぇよ! けど、その、……スウェン達には内緒にして欲しい、かも……」
「相変わらず、可愛くねぇな」

 ログは顰め面でそう言ったが、「まぁいい」とエルから視線をそらすと、独り言のようにこう続けた。

「安心しろ、言いふらすつもりはねぇよ。勿体ねぇだろ」