「それぞれのエリアは、悪夢みたいなものなのかもしれないな。これはスウェンの推測だが、仮想空間は『夢』を見本に造られているのだから、入り込んだ人間の悪夢に、侵入者の破壊と妨害をプログラムしたのではないか、と、スウェンはそう言っていた」

 セイジとエルは、しゃがみ込み、話し役と聞き役に分かれて向かい合っていた。クロエは、鞄の中で丸くなってしまっている。

「じゃあ、俺たちの夢とか想像が反映されちゃう事もあるの?」
「うーむ、それはどうだろう。仮想空間に入る前に説明はいくつか受けたが、通常の精神値では出ないらしい。そうだな、精神力が低下した場合は、あるとかないとか……どうだろうなぁ…………」

 セイジという男は、真面目で真っ直ぐな男のようだ。考えるには器用さが欠けている節もあるので、参謀には向いていない。

 軍人にしては好ましい性格をしているようだと推測しながら、エルは「なるほどなぁ」と、ひとまず聞いた話を、簡単に頭で整理してみた。