「私が埋まっているな。――で、君は一体何を?」
「自分の事なのに反応が薄過ぎるッ。見て分かるだろ、俺は、あんたをここから引きずり出そうとしているんだよ!」

 エルは複数の電気ケーブルを、コンバットナイフで素早く切り払うと、更に力を込めてマルクの腕を引っ張った。

 マルクが、再度状況を把握するように辺りに目を向けた。彼は改めてエルへと視線を戻すと、またしても片眉を僅かに引き上げた。

「残念だが、君の力では無理だ。諦めなさい」
「俺は諦めねぇよ! というか、お前ッ、だから何でそんなに冷静なの!?」
「私が大人だからだ」
「チクショーッ、俺だって子共じゃねぇよ! この野郎、後で覚えてろよ!」

 マルクという男は、仏頂面でつらつらと嫌味を言える人間のようだ。必死に頑張るエルを、やや怪訝そうな顔で眺めていた。

 腹正しさを底力に、エルは「せぇのッ」と掛け声と同時に、マルクの腕を力一杯引いた。しかし、彼を引きずり込もうとする電気ケーブルの力が、途端にぐっと強くなり、びくともしなくなった。