人を遠ざけるばかりが強さではないのだと、彼女と過ごす事で見えて来たが、誰かに優しくしてあげる事は、とても勇気がいる。私は、彼女のように素直に微笑むなんて、とてもじゃないが真似する事は出来ないだろうとも分かっていたのだ。

 エリスは顔を会わせれば私に話しかけ、都合があれば二人で勉強もするようになった。同じハイスクールに進んでからは、もはや友人同士と口にするのも慣れ親しんだ。

 希望する分野は同じだったが、専門内容は少し違っていた。私達は共に、研究職に就くくことを目指して難関大学を志望し、数年後に希望通り入学の切符を手に入れた。私は当然の結果だと思ったが、彼女は、支えてくれた皆のおかげだと微笑みながら泣いていた。多くの同級生が、同じように涙して彼女を見送った。

 大学では、素晴らしい環境で勉学を進める事が出来た。彼女を軽蔑するような学生もほとんどおらず、彼女の努力と才能を尊敬し、一緒に切磋琢磨する姿は、私の眼にも美しく感じた。

 一部の授業が彼女とは重なっており、私達は相変わらず、良き友人として共に時を過ごした。エリスは、すっかり美しい女性へと成長を遂げていた。彼女に恋心を抱く男は何人もいたが、どうやら報われなかったようだ。

 私は、その話を同じ寮生から聞かされたのだが、私の反応が予想以上につまらなかったのか、語った彼は不満そうだった。

「お前、彼女と仲が良いだろう。やきもきしねぇの? 本当は彼女の事が好きなんだろ?」
「残念ながら、異性間の『愛』であると言いたいのであれば、それは不正解だ」

 友人として、私は彼女以上の共はいないだろうと思っていた。この気持ちが友愛異常なのかは知らないが、彼女には、誰よりも幸せになって欲しかった。私では役者不足であり、私は誰よりも、彼女の力になれる友人でありたかった。