彼の姿を確認してすぐ、エルは、電気ケーブルの絨毯目掛けて飛び下りた。

 マルクの身体は、胸から下が大量の電子コードの下に埋まってしまっていた。彼の首に手を当ててみると脈拍はあり、エルの手よりも暖かい体温をしていた。

「良かった。まだ生きてる……」

 とはいえ、安心するのはまだ早い。

 エルは救出する事に意識を切り返ると、マルクを押さえつけている電気ケーブルをかき分けて退かそうとした。しかし、思った以上に固く絡み合ってしまっており、腕力ではどうにも出来そうにないと分かった。

 作戦を変更し、コンバットナイフで切り裂いて掘り返す事にした。

 しかし、切り裂いてすぐ、電気ケーブルが自らの意思で動いていることに気付かされた。切った先々から、電気ケーブルが生き物のように蠢いて増殖し、マルクの身体を更に奥へと引き込もうと動き出した。

 夢世界は、損害を与えたマルクを、この人工夢世界ごと消してしまうつもりなのだろうか?

「……ッんなこと、させるかよ!」

 エルは、コンバットナイフで電気ケーブルを切り付けると、それを素早く腰の革鞘に戻した。自由になった両手を、増殖し蠢き続けるケーブルの隙間に深く突き入れ、マルクの手を探した。