「僕らは人数が限られているから、考慮したお遊びを希望するけれどね」
「そうね、あなた達は『兵士』がいないもののね。じゃあ、私が『鬼』をやるから、あなた達で私を掴まえるのはどうかしら?」

 地面から次々に噴き出す茨は、お互いを絡ませ合いながら増殖し続け、塔の前までの長い距離を覆う程に膨れ上がった。強固な太い黒鉄の茨の動きが止まると、そこから口がついただけの赤黒い蛇のようなモノが芽を出すように首を伸ばし、地上に佇む人間を嗤うように見降ろした。

 エリスが、ふわりと浮かび上がった。彼女は巨大な黒い鉄の茨の頂上に腰かけると、無邪気に嗤った。

「ここまで辿り着いたら、あなた達の勝ちよ」
「――じゃあ、何をしたら君の勝ちになるんだい?」
「あなた達がここまで辿り着けなくて、動ける人がいなくなったら、私の勝ち」

 死んでしまったら負けだ、と彼女は言いたいのだろう。

 スウェンとエリスがやりとりをする中、エルは、辺りの様子を確認し「クロエ」と呼んでみた。すると、しばらくもしないうちに建物の影からクロエが出て来て、優美な身のこなしで瓦礫を踏み越えてエルの胸に飛び込んだ。