クロエが、嫌悪感を意思表示するように鼻先を動かせていた。エルが「大丈夫かクロエ」と声を掛けても、彼女は引き続き『支柱』を睨みつけていた。

 まるで互いに意思疎通するような、エルとクロエのやりとりを見てスウェンは苦笑したが、彼は何も言わずに視線をそらした。

「あれ、一体何で出来ているんだろう?」
「お前の知るところじゃない」

 ここまでクロエが警戒する物も珍しく、エルが思わず疑問を呟くと、ログが断るようにぴしゃりと言った。

「調査と推測は進んでいるが、機密事項だ。とにかく、俺達はあれを破壊して『エリス・エリア』まで入らなきゃならない」

 上からの物言いにエルは苛立ちを覚えたが、機密を把握する気はなかったので、追及はしない事にした。

 スウェンが横から出てきて、子どもをあやすような慣れた手つきで、エルの身体の向きを扉の方へと向かせた。

「まあまあ、後は僕らで処理するから、扉の外でセイジと待っててよ。怪我でもされたら危ないからね~」

 銃撃戦の時のような、ハチャメチャな事にでもなるのだろうか。