エルは唇を引き結ぶと、スウェンへ目を向けた。

「……スウェンさん、ここは任せてもいい? 俺、塔へ向かいたいんだ。マルクは、まだ生きているはずだから」
「君、正気かい? 彼を助ける義理はないんだよ」
「俺は、マルクを助けたいんだよ。生きているのなら、尚更助け出したい。何もしないまま諦めるなんて、俺はしたくない」

 スウェンは渋るように顔を歪めたが、悩んだ末に、諦めたような苦笑をこぼした。

「僕はね、君達とは違って前線の戦闘には向いていないんだけど……まぁ、仕方がないね。僕とセイジで時間稼ぎぐらいは出来るだろう。本当は、塔にはログ一人で向かってもらう予定だったけれど」

 そこで、スウェンは、ちらりとログに目配せした。

「ログ、エル君を任せてもいいかい?」
「――どうせ、このガキは『待て』なんてきかないだろ。俺は、隊長命令に従うまでだ」

 相変わらずの仏頂面で答えつつも、反論するような声色ではないログを、エルは戸惑いつつも盗み見た。

 ログが『エリス・プログラム』を壊してしまえば、目の前の少女の姿をした驚異は消える。しかし、足手まといにはなりたくないので、エルとしては、そこには便乗せず個別で向かいたいとも思っていたのだ。

 てっきりログは反対すると思っていたんだけど……

 このあと、どういう展開が待っているかは予測も付かないが、一筋縄でエリスを超えられる可能性は低い。反対された流れで「じゃう勝手にそれぞれ行こう」とする算段だったのだが。

 でもまぁ、二人一組の方が安全性も勝機も上がると考えれば、別に変でもない、のか?

 それならば、仕方ないとエルは一人考えていた。