エルは、この世界で『エリス』と遭遇した時の事を思い起こした。
彼女は、きっと記憶を手放し過ぎて、本当の事を忘れてしまったのだろう。彼女の中では、新しい記憶から虫食いのように無くなっていってしまうのだ。人間であるエリスの記憶の一部を、別の思い出と混同してしまっている可能性はあった。
最後に彼女と約束事をした人間は、恐らくマルクだろうが、目の前に佇むエリスは既に彼の事を覚えていないのかもしれない。でなければ、マルクが操っていた戦闘兵器を攻撃する筈はないだろう。
「他にも何かあったような気がするけど――忘れてしまったわ。あなたたちは、あの人のお友達なの?」
エリスの見開かれたままの瞳が、狂気を孕んだ笑みでこちらを見据えた。
スウェンは、後ろにアリスをそっと横たえると、彼女から隠すように立って「まぁ、そうだね」と答えた。
「僕達は、彼の友人みたいなものさ。君は、マルクという人を知っているかい?」
世界が壊れる音が一際大きく響き渡った。エルは、このエリスが背後から迫る闇と、砕かれ飲みこまれてゆく瓦礫を認識出来ているのだろうかと、場違いな哀しみを覚えた。
彼女は、きっと記憶を手放し過ぎて、本当の事を忘れてしまったのだろう。彼女の中では、新しい記憶から虫食いのように無くなっていってしまうのだ。人間であるエリスの記憶の一部を、別の思い出と混同してしまっている可能性はあった。
最後に彼女と約束事をした人間は、恐らくマルクだろうが、目の前に佇むエリスは既に彼の事を覚えていないのかもしれない。でなければ、マルクが操っていた戦闘兵器を攻撃する筈はないだろう。
「他にも何かあったような気がするけど――忘れてしまったわ。あなたたちは、あの人のお友達なの?」
エリスの見開かれたままの瞳が、狂気を孕んだ笑みでこちらを見据えた。
スウェンは、後ろにアリスをそっと横たえると、彼女から隠すように立って「まぁ、そうだね」と答えた。
「僕達は、彼の友人みたいなものさ。君は、マルクという人を知っているかい?」
世界が壊れる音が一際大きく響き渡った。エルは、このエリスが背後から迫る闇と、砕かれ飲みこまれてゆく瓦礫を認識出来ているのだろうかと、場違いな哀しみを覚えた。