今『エリス・プログラム』に関わる機材は全て、ハイソン達のラボに集められている。どちらも仮想空間から出られる条件は揃っており、後は出口の開口を待つだけという最悪な状況なのだ。

 その原理からすると、エリスの到着場所も、スウェン達と同じ場所になっている。ハイソン達が『出口』を繋げてしまうよりも先に、エリスという少女の姿をした人工知能体をどうにかしなければならないという事だ。

 それを理解した途端、場が静まり返った。セイジが「ギリギリの状態に変わりはないのか」と悩ましげにエリスを見やり、スウェンが眉間に皺を寄せて顎に手をやる。

 分かっている事は、一つだ。

 人工夢世界のエリスを、外に出してはならない。

 そうなった場合、想定される中でもっとも最悪な展開が待っているような気がして、エルは知らず唾を飲み込んだ。よくは分からないが、一瞬、脳裏に多くの人間が死ぬホラー映画のような展開を想像してしまっていた。