筒状の重々しい鉄の機械に繋がれた無数の電気ケーブルは、一番太い物だと、人の太腿ほど大きかった。それらが無数に広がり、白い床に蛇のように広がっている。それは四方の壁まで続き、それぞれが白い壁の中に飲み込まれていた。

「……なに、この部屋」

 思わず、エルは呻いた。現実世界ではないはずなのに、なんだか嫌な匂いも立ち込めているようで気持ちが悪くなる。

「これが『支柱』だ」

 セイジがそう答えた。

「一つ目の支柱も、全く同じ具合に置かれていた。これが、【仮想空間エリス】の模造品である、セキュリティー・エリアを造り出している物の正体らしい」
「だから、僕が機械だって言っただろう? こういうことだよ。人工的に造られているんだ、何もかも。正規の【仮想空間エリス】のセキュリティーの他に、マルクは彼自身で作り上げた予備の防衛システムを設置していったらしい。小型だけど厄介な代物だよ。これを壊さないと、僕らはこのエリアからは出られないのだから」