つまり、今現れた『エリス』は、自分達が目的とする少女ではない。本物を覆い隠してしまっている機械をどかさなければ、あの時、エルが助けたいと望んだ少女に触れる事も叶わないのだ。
エルは、ホテルマンの手を離れた。焦点が定まらない目を凝らし、向こうに佇むエリスを見据える。
「――という事は、この人工夢世界を造り出している『エリス・プログラム』を破壊すればいいんだね」
そうすれば、本物の『夢人』エリスに手が届くのだろう。
その時、上空から硝子が割れるような音が降り注いだ。薄い硝子が、一つずつ壊れてゆくような凛とした音に、エルは視線を上げた。上空に漂う厚い雲の一部が削がれ、とっぷりと暮れた夜の色が覗いていた。
「『外』に居る人間が、先にシステムの主導権のほとんどを奪還したようですね。『出口』も既に彼らの手の内でしょう。後は、繋がるのを待つばかりというところでしょうかねぇ」
ホテルマンは、わざとスウェン達に聞こえるように説明した。スウェンが、肩越しに振り返り「『亡霊』の件が、解決したという事でいいのかな」と確認するように問い掛けた。
エルは、ホテルマンの手を離れた。焦点が定まらない目を凝らし、向こうに佇むエリスを見据える。
「――という事は、この人工夢世界を造り出している『エリス・プログラム』を破壊すればいいんだね」
そうすれば、本物の『夢人』エリスに手が届くのだろう。
その時、上空から硝子が割れるような音が降り注いだ。薄い硝子が、一つずつ壊れてゆくような凛とした音に、エルは視線を上げた。上空に漂う厚い雲の一部が削がれ、とっぷりと暮れた夜の色が覗いていた。
「『外』に居る人間が、先にシステムの主導権のほとんどを奪還したようですね。『出口』も既に彼らの手の内でしょう。後は、繋がるのを待つばかりというところでしょうかねぇ」
ホテルマンは、わざとスウェン達に聞こえるように説明した。スウェンが、肩越しに振り返り「『亡霊』の件が、解決したという事でいいのかな」と確認するように問い掛けた。