ホテルマンは、エリスが現われてすぐに、エルの中から離れて自分の姿に戻っていた。彼は、その腕にエルを抱えたまま彼女にそっと呟いた。

「本来の『夢人』エリスは、オリジナルだった人間のエリスを『器』に生まれました。しかし、あれは人工の『器』が出来た為に派生した存在なのです。力が暴走し始めた結果、彼女達の中で記録が逆行し続けている……どのぐらい彼女の中で正しさが失われているのか、私にも読めません」

 ホテルマンの腕に支えられたエルは、鈍い眩暈を覚えたが、片手で頭を抱えつつ彼の腕を掴んで自身の足で立った。

「……一体どうなってるの? あの『エリス』とは、別人って事?」

 エルとホテルマンが元に戻った事に気付き、ログが、ちらりと目を向けた。

「お前、大丈夫なのか」

 声を掛けられたエルは、片手を軽く振って応えた。全身の筋肉が軋むような違和感は完全には引いておらず、すぐには身体のバランスが保てなかったが、そんな素振りを見せたくなくて「大丈夫だよ」と彼の視線をエリスに戻させた。