十六歳ほどの外見をした少女は、癖のない長い金髪を広げ、翼でもあるように空中に浮遊していた。形の良い胸と、大人び始めた腰のくびれが映える漆黒のドレススカートからは、白い膝が覗き、腰元に結び付けられた大きな赤いリボンが揺れていた。整った小奇麗な顔は眠っているように微笑み、その大きな瞳が、ゆっくりと開かれてゆく。

 エルがセイジから手を離し、ぐっと眉根を寄せた。

「……人工とは、愚かしい」

 彼女の声で、ホテルマンが軽蔑の眼差しでそう呟いた。


 少女の瞳が開き切った時、彼女を包み込んでいた光りが圧縮され、衝撃波のような空気の振動が起こった。一瞬にして風が止み、崩れ落ちていた大蛇や対地上用戦闘機MR6の残骸が、瞬く間に消滅した。

 浮遊したままの少女、地上に佇む一同を見据えた。今のエルと全く同じ、宝石のように輝く真っ赤な瞳には、青紫の淡い光りを放つ瞳孔があり、その鮮やかな色合いは、彼女の白い肌に対象的でひどく際立っていた。

「こんばんは。ねぇ、私の為の『出口』は何処にあるのかしら」

 十六歳ほどの外見をした少女――エリスが、狂った無邪気な笑顔を浮かべた。