ホテルマンの台詞を耳にしたスウェンが、アリスの無事を確認しつつ、疲弊しきった顔を曇らせた。

「随分冷たい言い方だね。まるで、『生きているのなら助けなければいけないし、それは面倒だから死んでほしい』っていう風に聞こえるよ。エル君の顔で言われると、僕はとても複雑なのだけれど……」

 呼吸も落ち着かぬまま、スウェンが細々と言った。ホテルマンが全速力での疾走を続けたせいで、持久力のないスウェンの身体は、強い休息を要求していた。

 エルの中に入っているホテルマンが、「これは彼女の身体なのですから、しょうがないでしょう。気にしないで下さい」と軽くあしらった。

「『出口』が開き切ってしまう前に、プログラムを破壊してしまわなければいけません。我々は物質世界の物を壊す力はないのですから、そこは『愛想のない大きなお客様』に頑張ってもらわなくては困ります。既に『エリス』は、アリスの手を離れてしまっているのですから、出来るだけ早く――」

 その時、エルが眉根を寄せて顔を上げた。彼女は苦い顔をすると、瞬時にセイジの元へ移動し、彼の襟首を掴まえて後方へ跳躍した。