片腕を失った対地上用戦闘機MR6が、身体の向きをエル達の方向へ定めた。

『君達は何も分かっていない。彼女は生きているんだよ。ここへ逃れて、無事でいたのだ』

 地上から上空へ伸びあがった巨大な木の根が、次第にその姿を変え始めた。それは増幅しながら成長すると、根の表面が滑らかな体表へと変わり、腕も足もない動物の胴へと転じた。最後に根の先端部分には頭部が生え、獰猛な大蛇へとすり替わる。

 大地から身体を生やした数十の大蛇が、一斉に三人目掛けて襲いかかった。

 エル達は反射的に地面を蹴りあげ、跳躍して攻撃を回避した。標的を逃した大蛇の強靭な顎が、大地やビルを簡単に噛み砕いた。破壊音が鳴り響き、後方からアリスの悲鳴が上がった。

 ログが舌打ちし、走り出した。彼はアリスの前方に回り込むと、大蛇の破壊によって飛来して来た瓦礫を、鍛え上げた腕と足で打ち砕いた。

 セイジが、大地へ噛みついた大蛇の動きが僅かに止まった隙を逃さず、その胴体を掴み、そのまま持ち上げて近くのビルへと叩き付けた。彼はすぐに体制を立て直すと、二メートルはある大きな防弾ガラスの破片を拾い上げ、続いて迫り来る別の大蛇の頭に向かって振り上げた。

 時速二百キロ以上で放たれたガラス片が、大蛇の首の半分を切断した。大蛇は切断された中骨を剥き出したまま、力を失い地面へと崩れ落ちたが、その切断口からは体液の流れはなかった。

 形ばかりの大蛇達は、蛇独特の威嚇の仕草をせず、開いた口から氷柱のような鋭利な刃を覗かせて、エル達を見降ろした。