「痛ッ、何なの一体なんなのさ!? というか無駄に痛いんだけど!?」
「お前、さっきから何でこっちを見ないんだ」
「はぁ? 一体何の話だよッ」

 エルは、非難の目でログを見上げた。大きな背を丸めるように屈め、こちらを見降ろすログは相変わらず仏頂面で、怒っているのか呆れているのかも分からない気の抜けた調子で言葉を続けた。

「話しをする時は、ちゃんと相手の顔を見ろって教わらなかったのか」

 それ、今関係ある? こいつ、マジで馬鹿なんじゃないの? 

 むしろ空気が読めない男なのだろう。エルは、つい先程の話の流れを思い返し、やはりログは気に食わない要素があって、腹いせでこのような嫌がらせを行っているのだと思った。

「お前あれだろ、俺に指示されたのが嫌なだけだんだろ、絶対にそうだよな!? 嫌がらせにもってこいの痛みだよッ、今すぐその手を離しやがれ!」
「んな弱っちぃ拳でポカポカされても痛くもねぇわ。にしても、お前身長もそうだが、顔も小せぇのな」
「この状況で喧嘩売ってんの!? おいコラ、ついでとばかりに頭をぐりぐりするな、身長が縮んだらどうしてくれるッ」

 二人のやりとりを見て、セイジが困ったように頬をかいて、「うーん」とぼやいた。

「そういえば、ログは基本的に、スウェンの命令以外は聞かないからなぁ……」