ホテルマンは、ふうっと溜息を吐いて独り事のように言葉を続けた。

――……はぁ、頑固な人だ、彼を助けるつもりですか……そもそも、人間とはろくな物を作りませんねぇ。彼らが作り上げた機械が『夢』を侵した結果、暴走を始めた『夢人』の力が、本来存在するはずのないもう一人の『人工夢世界の夢人』を作り上げてしまった事で、今回の問題が複雑化しているというのに。

 え? それじゃあ、俺があの暗闇で出会った二つの人形って……

 ちょっと待った、とエルはもう一度情報を整理すべく努めた。つまり、狂っているから『エリス』の様子が変だったのではなく、ホテルマンが口にしている『エリス』は、別々に一人ずついているという事だろうか。

 意識が二つあるという事? それとも、全く同じように二人の『エリス』がい――


「おい。おい、クソガキ」

 唐突に顔を掴まれ、エルは我に返った。

 両手で顔を左右からはさみ込まれたまま、無理やり横に向かされ、戦闘時に痛めた身体にピキリと痛みが走った。