「小せぇ者同士、向こうで固まっていた方か都合も良いだろ。離れられちゃ守るのも一苦労だ。むしろ、アリスと一緒に居とけ」
「お前、マジでぶっ飛ばすぞ」

 しかし、エルは考える事に精一杯で、本気で怒る余裕はなく、どう動こうか沈黙しているようにも見える対地上用戦闘機MR6に視線を戻しながら、落ち着いた口調で言葉を続けた。

「いいか、あの子とお前は面識があるんだ。アリスにとって、ここは全く知らない世界だし、知っている人間が側にいた方が安心するし、守りやすいと思う。スウェンもこっちに向かっているはずだから、とにかく今は、俺とセイジさんがメインで動いて『敵』を潰す」
「確かに、エルの言う通りかもしれない。大きな物が飛んで来た場合、パワーの違いで弾き返す事には無理があるだろうから、ログが適任だ」

 セイジが同意を求めるように目を向けると、ログが顰め面を返した。彼らはアリスを見て、エルを見降ろし、それから互いに目配せして、対地上用戦闘機MR6へ目を戻し再考するように黙りこんだ。

 こちらに注意が向いていない事を確認し、エルは頭上を仰いだ。心の中でホテルマンに声を掛けてみる。

 アリスは無事奪還出来たけど、他の人達の状況は?

――『外』では順調に事が進んでいます。あの調子からすると、奪われた人間達の意識も予定より早く解放出来るでしょう。とはいえ、私としては、貴女様が先に塔内に突入する案は賛成致しかねますね。人間が作った機械に関しては、『愛想のない大きなお客様』にしか破壊する事が出来ないですし? そもそも、あの科学者など放っておきなさい。

 最悪な状況になっていた場合、マルクは死んでいる可能性もあるだろう。それでもエルは、直感から生きていると信じて諦めきれなかった。