「近くにあった別の戦闘兵器は、俺が壊しておいたぜ。当の入り口を探している間に一周しちまってたみたいだからな。残ってる兵器は、おそらくこいつで最後だろ」
「……お前、また」
「おい、その目はなんだ。俺は迷子になってねぇぞ」

 いや、きれいに一周しちゃった時点で迷子じゃん。というか一周したって事は、スタート地点が塔の入り口近くだったって事だよね? こいつ、馬鹿じゃないのか? そもそも、このバカでかい塔を一周するって、どれだけ時間が掛かったんだろうか……

 言いたい事が次々と脳裏を過ぎったが、まだ敵を叩き潰せ手はいないのだ。エルは、眼差しだけで留めておいた。

 三人は、対地上用戦闘機MR6の向こうに見える巨大な塔の入口を確認した。頑丈な鉄で造られた大きな入口には扉がなく、塔内の薄暗さだけが覗いている。

 その時、大地がまた僅かに振動した。

 世界が崩壊し続ける音が聞こえ、エルは、もう時間がないのだと思い起こされて顔を上げた。

 エルは一刻も早く、仮想空間に入り込んでしまっている人間を、外に連れて出す事について考えた。外から操作を行っているという事は、マルクは恐らく塔にいるのだ。彼の身に何が起こっているのかも、エルとしては早急に確認したかった。

 何故なら、エルの予想が但しければ、彼の方も早く助け出さないと間に合わなくなる。

「――マルクは、きっと塔の中だ。俺が先に向かうから、こっちの方は頼んでいい?」
「クソガキ一人で突っ込む気か? プログラムの心臓部分があるってんなら、そいつは俺の獲物だろ。むしろ、お前とセイジでこいつの相手をしてろ」
「ちょ、ひとまず落ち着くんだ、二人とも」

 セイジが慌てたように言い、二人の仲裁に入った。