対地上用戦闘機MR6の片腕の内部から破壊音が上がり、ログが触れた箇所から、電気ケーブルが破裂し機器の接合部の崩れが広がった。

 事態を理解したように、対地上用戦闘機MR6が残っていた腕を振り上げた。ログは攻撃を回避するように機体から飛び降りたが、戦闘兵器は彼の動向には目もくれず、壊れ始めた腕を自らの腕で切り落としてしまった。

 ログから距離を取りながら、対地上用戦闘機MR6が、片腕で体勢を立て直した。

『――君の能力は知り尽くしているつもりだ。実に厄介だよ。まるでウィルスのように次々と解体されては困る』
「そらどーも」

 セイジの元まで後退したログが、尻餅をついたエルをちらりと確認し、安堵するような吐息をこぼしながら関心のない声で答えた。

 警戒を解いていないログは、すぐに視線を戻すと、顰め面で改めて対地上用戦闘機MR6をじろじろと眺めやった。

「しっかし、見ない間に随分死体っぽくなったじゃねぇか、マルクさんよ。つか、息出来んのか、その中は」
『これは私の姿を模した人形だ。気にする事はない』
「科学者ってのは、どれも悪趣味だな」

 ログが吐き捨てた。操縦席は既にオレンジ色の液体で満ちており、中に座る人間は、まるでコードに喰い破られた死体にしか見えなかった。