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 大人しいセイジから、初めて怒声する声を聞いて、エルは我に返った。

 野太い大声に驚いたのも束の間で、前に回り込んで来たセイジが、こちらに向かって放たれる巨大な瓦礫を待ち構えた。

 無茶だと叫んだエルの声は、次の瞬間、爆風にかき消されていた。

 大地に両足を踏みしめたセイジが、普段の温厚な表情を余裕なく歪めて額に青筋を浮かべ、両手を突き出してビルの先を受けとめた。落とされた数トンもの瓦礫の衝撃が、彼の両足を伝って地面を叩き割った。爆風と共に細かい瓦礫や土埃が舞い上がり、エルも堪らず尻餅をついてしまった。

 両手で数トンもの瓦礫を受けとめたセイジが、「ぐぅ」と腹の底から呻るような声をこぼした。彼の剥き出しになった腕や首筋や顔に、筋肉の筋がビキリと立っていた。セイジは全身の筋肉で数トンものビルの一角を完全に受けとめると、雄叫びと共に、それを隣のビルへと放り投げた。

 土埃が舞う中、続けて落ちて来たトラック一台分の瓦礫やコンクリートを、セイジは同じように受けとめ、勢いよく投げ返した。

 舞い上がった土埃で視界がすっかり悪くなった前方から、対地上用戦闘機MR6が現れて、その腕を振るった。セイジはそれを強靭な拳で打ち返すと、装甲が剥き出しになった機体の足を無造作に掴み持ち上げ、一気に背負い投げてしまった。

「ログ今だ! 急ぎ解体してくれ!」
「分かってる!」

 叫ぶセイジの脇を、指の関節を鳴らしながらログが駆け抜けた。

 ログは倒れ込んだ機体目掛けて飛び込むと、左手で対地上用戦闘機MR6の腕を叩き付けた。彼の腕に青白い静電気のような光が弾けると同時に、赤黒い紋様が禍々しく浮かび上がった途端、ログの身体から発生した電流のような力が機体を走り抜けた。