夢を見ないあの子の体質を知ったのは、後になっての事だ。
アリスは、その子と関わった誰かの記憶を『夢』に見て『あの子』自身を知る事が出来た。母が最期に残していった何かしらの力が働いたのかは分からないが、自分は、あの子の事を知らなければならないのだと、何故かそう思ってもいた。
夢に見るのは、いつも何でもない映像の断片だったから、アリスは、あの子の声も知らない。
強い女の子だと思った。両親と死に別れる事を自分で選び、役目を成し遂げる為に生きた。記憶は封じられてしまったけれど、あの子は諦めず、いつか助けてあげられるように強くあろうと努力していた。
母は、あの子とアリスが友達になれる事を夢に見ていたようだった。会いに行く事は叶わなかったけれど、きっと二人は良い友達になれただろう、と、夢の中で母はアリスにそう語ってもいた。
心が誰よりも近いのだという。
あの子は、決められた境界線をいとも簡単に飛び越えて、片割れがない不完全な『夢人』を訪ねられるぐらい、とても軽やかな心を持っている。
あの子が降り立つ間、不安定な力の場は均衡を取り戻した。人間でありながら、あの子は『夢人』の片割れである『裏の子』としての役目も補う事が出来るほど優秀な『器』と『魂』を持っていた。
まだ自分の人生を生きていた時から、あの子は、何かに呼ばれたように振り返り、遠い目でどこかを見ている事があった。人ではないモノ達に「帰っておいで」と呼ばれているようだった。
不思議な日本人の女の子。二度目の生を受けて、偽名をエルとした子。
あの子自身は認識していなくとも、いつも見えない者達の気配を目で追い、大きな瞳を躊躇する事なく向けていた。
アリスは、その子と関わった誰かの記憶を『夢』に見て『あの子』自身を知る事が出来た。母が最期に残していった何かしらの力が働いたのかは分からないが、自分は、あの子の事を知らなければならないのだと、何故かそう思ってもいた。
夢に見るのは、いつも何でもない映像の断片だったから、アリスは、あの子の声も知らない。
強い女の子だと思った。両親と死に別れる事を自分で選び、役目を成し遂げる為に生きた。記憶は封じられてしまったけれど、あの子は諦めず、いつか助けてあげられるように強くあろうと努力していた。
母は、あの子とアリスが友達になれる事を夢に見ていたようだった。会いに行く事は叶わなかったけれど、きっと二人は良い友達になれただろう、と、夢の中で母はアリスにそう語ってもいた。
心が誰よりも近いのだという。
あの子は、決められた境界線をいとも簡単に飛び越えて、片割れがない不完全な『夢人』を訪ねられるぐらい、とても軽やかな心を持っている。
あの子が降り立つ間、不安定な力の場は均衡を取り戻した。人間でありながら、あの子は『夢人』の片割れである『裏の子』としての役目も補う事が出来るほど優秀な『器』と『魂』を持っていた。
まだ自分の人生を生きていた時から、あの子は、何かに呼ばれたように振り返り、遠い目でどこかを見ている事があった。人ではないモノ達に「帰っておいで」と呼ばれているようだった。
不思議な日本人の女の子。二度目の生を受けて、偽名をエルとした子。
あの子自身は認識していなくとも、いつも見えない者達の気配を目で追い、大きな瞳を躊躇する事なく向けていた。