一体、いつの話しをしているのだろう?
エルは酷い乾きを覚えて、もう一度唾を飲み込んでしまった。唇が渇いて、言葉が口の中で空回りする。セイジやスウェンから話を聞いた限りでは、アリスはもう、そこには居ないはずなのだ。
「……違う、それは違うよ」
どうにか頭の中を整理しながら、エルは声を絞り出した。
「状況を、もう一度きちんと見極めてみてよ。アリスはもう、そこにはいないはずなんだ。――貴方は、今。どこにいるんだ?」
『話が噛み合わないようだな。お前こそ何だ? 私の記録にもいないお前は、この世界が起こしたバグの一つなのか?』
不意に大地が震え、ビルの一角が崩れた。しかし、崩れた建物の残骸は地上へは降り注がず、割れた地面の一部が瓦礫と共に浮かび上がった。
『ここは、私が直接管轄に置くセキュリティー区域だ。『エリス』がまだ目を覚まさないのも、バグの修正が完了していないせいなのだろう。――だから私は、人間ではないお前も排除する。プログラムのバグは、取り払わねばならないからだ』
数トンはあろうビルの三階部分が折れ、地面に落ちる事なく浮かび上がり、戦闘兵器の後方まで移動する。それかゆっくりと角度を変え、鋭利な角をエルへと向けて照準を合わせた。
なんて大きさだろうか。これだと、避けるのも間に合わず押し潰されてしまうのだろうな……
エルは、どうするべきか思い浮かばず、真っ白になった頭でその光景を眺めていた。考えても考えても、回避する方法が思い浮かばなかった。マルクも助け出すべき人間の一人なのだという事実が、エルを動揺させて思考を鈍らせていたのだ。
ああ、どうしたら彼に伝わるだろうか。忙しなく胸を掻きたてる、この気持ちを。
エルは懸命に考えた。マルクは不器用だけれど、きっと、きっかけは些細な事だったのだ。世界の破壊だとか、滅亡だとか、そんな事を考えて『仮想空間エリス』に手を出して、乗っ取った訳ではない。
エルは酷い乾きを覚えて、もう一度唾を飲み込んでしまった。唇が渇いて、言葉が口の中で空回りする。セイジやスウェンから話を聞いた限りでは、アリスはもう、そこには居ないはずなのだ。
「……違う、それは違うよ」
どうにか頭の中を整理しながら、エルは声を絞り出した。
「状況を、もう一度きちんと見極めてみてよ。アリスはもう、そこにはいないはずなんだ。――貴方は、今。どこにいるんだ?」
『話が噛み合わないようだな。お前こそ何だ? 私の記録にもいないお前は、この世界が起こしたバグの一つなのか?』
不意に大地が震え、ビルの一角が崩れた。しかし、崩れた建物の残骸は地上へは降り注がず、割れた地面の一部が瓦礫と共に浮かび上がった。
『ここは、私が直接管轄に置くセキュリティー区域だ。『エリス』がまだ目を覚まさないのも、バグの修正が完了していないせいなのだろう。――だから私は、人間ではないお前も排除する。プログラムのバグは、取り払わねばならないからだ』
数トンはあろうビルの三階部分が折れ、地面に落ちる事なく浮かび上がり、戦闘兵器の後方まで移動する。それかゆっくりと角度を変え、鋭利な角をエルへと向けて照準を合わせた。
なんて大きさだろうか。これだと、避けるのも間に合わず押し潰されてしまうのだろうな……
エルは、どうするべきか思い浮かばず、真っ白になった頭でその光景を眺めていた。考えても考えても、回避する方法が思い浮かばなかった。マルクも助け出すべき人間の一人なのだという事実が、エルを動揺させて思考を鈍らせていたのだ。
ああ、どうしたら彼に伝わるだろうか。忙しなく胸を掻きたてる、この気持ちを。
エルは懸命に考えた。マルクは不器用だけれど、きっと、きっかけは些細な事だったのだ。世界の破壊だとか、滅亡だとか、そんな事を考えて『仮想空間エリス』に手を出して、乗っ取った訳ではない。