変わり果てた機械の中に居続ける今の男の姿は、異常だ。同じ人間の肉体とは思えないさまが、エルに強烈な違和感を覚えさせた。
「……お前は、本当にマルクなのか?」
答えは期待していなかったが、エルはすっかり足を止めて、そう問い掛けていた。
操縦席のマルクは、白目を痙攣させ、口からは大量の細い電気ケーブルと、オレンジ色の液体を垂れ流していた。もはや操縦艦も握ってさえいない姿に、生きていないのではないかと思われたが――
戦闘兵器の右腕が、宣戦布告のようにエルに向けられた。
『ワタ、シがマルクだ。ソウ、コ、これこそ、――……私が操る、私だけの攻防能力。私は戦士ではない。故に戦場には立たない。頭脳にて、この戦いを勝ち抜く』
操縦席のマルクは、既に口を動かしてはいなかった。戦闘兵器のスピーカーの音声が切り替わり、落ち着いた男の声が流れ出した。
エルは、額から流れる汗を拭った。一つの推測が脳裏を過ぎり、なんて悪趣味なのだろうと思った。
マルクは、この世界のセキュリティとして、自分と同じ姿をした人形を作り出し戦闘兵器に乗せているという事なのかもしれない。何でも可能な世界だからこそ、確かに自分が望むエキストラや兵士を造り出す事も出来るかもしれないが、その感性は理解出来ない。
「……お前は、本当にマルクなのか?」
答えは期待していなかったが、エルはすっかり足を止めて、そう問い掛けていた。
操縦席のマルクは、白目を痙攣させ、口からは大量の細い電気ケーブルと、オレンジ色の液体を垂れ流していた。もはや操縦艦も握ってさえいない姿に、生きていないのではないかと思われたが――
戦闘兵器の右腕が、宣戦布告のようにエルに向けられた。
『ワタ、シがマルクだ。ソウ、コ、これこそ、――……私が操る、私だけの攻防能力。私は戦士ではない。故に戦場には立たない。頭脳にて、この戦いを勝ち抜く』
操縦席のマルクは、既に口を動かしてはいなかった。戦闘兵器のスピーカーの音声が切り替わり、落ち着いた男の声が流れ出した。
エルは、額から流れる汗を拭った。一つの推測が脳裏を過ぎり、なんて悪趣味なのだろうと思った。
マルクは、この世界のセキュリティとして、自分と同じ姿をした人形を作り出し戦闘兵器に乗せているという事なのかもしれない。何でも可能な世界だからこそ、確かに自分が望むエキストラや兵士を造り出す事も出来るかもしれないが、その感性は理解出来ない。