叩き付けられた瞬間、呼吸が止まるのではないかと思うような強烈な痛みが走り、エルは堪らず呻いた。

 どうにか身体を立て直しながら、五感を通して身体の損傷を確認した。足や背中に打撲は出来るだろうが、腫れるまでの酷さはないと感じた。もし、最悪、それが腫れ上がったとしても、実際に筋肉や神経に制限を掛けてしまうまで、まだ時間はあるだろう。

「それでも、痛いのに変わりはないんだけどッ……~~~~ッああ、くそ! チクショー痛くなんかないったらッ。大丈夫、俺はまだ闘えるぞ!」

 エルは、痛みに悲鳴を上げる身体に、無理やり力を入れて攻撃体制を取った。自身を奮い立たせるべく奥歯を噛みしめる。

 戦闘兵器がこちらを振り返り、すかさずミサイル砲を構えた。エルは両足に力を入れると、発射されるミサイルを避けるため地面の上を駆けた。こちらから攻める時間も与えず、戦闘兵器は一発目、二発目、三発目、と全部で八発のミサイルを続けて発射した。

 エルは、爆発するミサイルから身を庇いながら、瓦礫を飛び越えた。八発目のミサイルが発射された際、抉れた地面から立ち上がるコンクリートに身を隠したのだが、最後のミサイルが、軌道を変えて横から迫り来る事に気付いて、慌てて地面へしゃがみ込んだ。

 頭上を通過した、八発目のミサイルがビルの中へと消えていき、建物内で激しい爆発が起こった。

「畜生ッ、大人げねぇ戦い方しやがって!」

 戦力差を前に、自然とエルの口調も悪くなった。

 けれど、これが戦場なのだろう。悔しいが、こればかりはどうしようもない。


 現状を悲観すれば士気を減退させ、大事な勝機を逃す事に繋がる。


 エルは立ち上がると、「やってやろうじゃんか!」と強がるように吐き捨てて駆け出した。しかし、ふと、オジサンだったら、どのように戦うだろうかと、一瞬そんな事を考えてしまった。